暖かく無関心なホットする人(P君) 109話

 9時30分、D君は必死になって彼女のコーチしていた。彼女は「D太郎と言うのは失礼
です。これからはコーチと呼ばせてください。」「そんな、コーチだなんて。」D君の
熱意が伝わったのか、彼女は何回も転びながら、だんだん滑れる距離を伸ばしていった。
 10時、「すごいね。リカちゃん午後には、かなり滑れるようになってるよ。ちょっと
疲れたでしょう。あの山小屋風カフェで一休みしよう。」「ええ、コーチ。」
 二人はスノボーをはずし20mぐらい歩いて行った。山小屋風カフェの外にスノボーの板を立て掛け、雪を払い中に入った。「フー暖かい。ここに座ろう。」「ええ、コーチ。」
「いらっしゃいませ、何にしますか。」「僕はホットコーヒー、ブラックで」「わたしは
紅茶とイチゴのショートケーキ。」D君はいつも4人なのに今日は2人なので、戸惑っていた。二人っきりだ。まさにデートだ。しばらくしてから頼んでおいたメニューが運ばれてきた。D君は年の功というか長年の経験から、こういう時沈黙は、緊張度がアップするだけだと知っていた。かと言って緊張して相手が興味ないことを、ペラペラ話すのも良くない。ようするに相手との距離感だ。相手の興味の無い事や自慢話をペラペラ話す人は
、相手に急接近するようでよくない。相手の興味のあることを相手とキャッチボールするのがベストだ。つまり、暖かく(相手の興味に同感し)無関心な(クールで相手に夢中にならない)ホットする人になればいい。そのことをD君は思い出した。4人でいるときの
距離感は100m(ベスト)だとすると、今は沈黙(500m)か急接近(50m)しやすい。
 D君は相手の興味のあることが知りたかった。それで、お見合いの席で「ご趣味は?」
とか聞くんだな。これはお見合いではないが、リカちゃんの興味のあることを知っておきたい。「リカちゃんって何か興味のあることってあるかな?」「はい、料理が趣味です。
今ケーキ作りに夢中です。」「ケーキの中で好きなのは何ですか?」「このイチゴの乗ったショートです。自分で作っていますがプロみたいに美味しいクリームが作れないんです。」「そうですか。僕はモンブランが好きです。」「わたしもモンブランが好き。
ベストスリーに入るかな。」「ベストスリーって。」「うーんと、イチゴショート、
モンブラン、チーズケーキかな。」「リカちゃんの家の近くにケーキの美味しい店あるかな。」「ええ、あります。OOOOっていう店なんだけど、その店の二階は喫茶店になっていて注文すると一階で作っているケーキを食べられるシステムなっているの。よかったら今度一緒に食べに行きませんか?」なんてことだ、リカちゃんの方からデートに誘う何て。D君は直ちにOKした。
                                   つづく