暖かく無関心なホットする人(P君) 362話

 午後5時15分、D君は会社の仕事が終わり、駐車場に向かって行く途中、リカに電話
を掛けた。「ブルルル、ブルルル、はい、加藤です。」「リカちゃん、D太郎だけど。」
「あっ、コーチ。」「今さら言うのも変なんだけど。自分でD太郎というのは、ちょっと
抵抗があるんだ。」「そうかもね。じゃあ、どんなニックネームがいいの?」
「似合わないかも知れないけど、Dだから、ディーン・藤岡とか、ジェームス・ディーン
のディーンなんか、かっこいいね。」「じゃあ今日からコーチじゃなくてディーンって
呼ぶね。」「それ、なんかいいね。」「ディーン、今日何か変わった事あった?」
「あったよ。朝、出かける前ちょっと思ったんだけど、RGRD+TKの、みんなの楽器は
よくみんなの性格に似ていると思ったことだよ。」「え、たとえば。」「ガッキーは
ドラムでしょ。ドラムって楽器は人間で言えば心臓だよ。心臓、ドラムはどんなことがあっても止まってはいけないんだ。ある意味、他人は、お構いなしと言う強さがある。
ガッキーを見ているとドラムにピッタリだなと思う。」「ディーンは人を見る目があるね
。面白い、ほかには?」「リーダーはベースでしょ。ベースは地味な楽器だけど、あると
無いとでは、音の厚みが全然違う。リーダーは空気のような存在で、いるのが当たり前
になっているけど、ないと困る。影ではRGRD+TKのことを祈っていると思うよ。」
「そうだよね。このグループができるように、長年祈っていたと思う。」「リカちゃん
はキーボードとボーカルだよね。キーボードのサウンドは聴く人の心を動かし、美しい
、まさにリカちゃんだよ。」「えー、気が付かなかった。」「剛君はリードギターだね。
前から思っていたんだけど、彼は無口で目立たないけど芯は強い、実行力がある人だ。
リードギターにピッタリだね。」「観察力が鋭いね。」「イノッチはミキサーだね。
ミキサーは楽器じゃないけど、それぞれの楽器の音と音量を調整して、ミックスして
聴衆に音楽を提供する人だ。どんなよい食材を使っていても、料理人の腕がよくなければ
美味しい料理が出来ないのと同じだよ。イノッチは前からバンドの裏方に興味があった
みたいだ。彼はメカと電気に詳しい。優れた音楽の作り方を知っている。」「ディーンは
?」「僕はリズムギターだよ。リズムギターはコードを弾くだけだから、気持ちに余裕
があるのでコーラスにも参加できる。だから僕の前にマイクを置いたんだ、リーダーは
よく分かっている。」
                                  つづく