「木曜日の夜からの徹夜の裁判」

 ヨハネは心臓の鼓動が止まらなかった。つい先ほどゲッセマネの園
で起こった事件は何だったのだろう。彼はイエス様を捕らえた群衆の
後について行った。群衆は大祭司カヤパの屋敷にイエス様を連れて行
った。その家には律法学者たちや長老たちが集まっていた。
 その時リーダーはどこにいるのかヨハネが探すと、「見つけた!」
でも自分からはかなり離れて、遠くから捕らえられたイエス様を心配
そうに見ている。自分の今いる大祭司の屋鋪の中庭までついて来た。  
リーダーは事の成り行きを見ようとしていたからだ。さすがリーダー
だ。他の弟子たちとは違うとヨハネは思った。リーダーは屋敷の下役
たちと一緒にたき火を囲んで座っていた。 
 ヨハネはその時カヤパの屋敷の中に居た。祭司長たちや最高法院の
全員は主を死刑にしろと騒いでいる。その時、誰かが嘘の証言をした。
ヨハネは主の傍に何時もいたので、そんなことは無かったと即座に
わかった。いったいどんな悪いことを主がしたんだ?ただの恨みゆえ
主を悪者にしようとしているとヨハネは思った。
 偽証人は何人も現れたが、証拠は得られなかった。最後に二人の者
が出てきて、「この男は、「神の神殿を打倒し、三日あれば建てるこ
とができる」と言いました。」と告げた。そこで大祭司は立ち上がり
主に言った。「何も答えないのか、この者たちがお前に不利な証言を
しているが、どうなのか。」主は黙り続けていた。大祭司は言った。
「生ける神に誓って我々に答えよ。お前は神の子、キリストなのか。
」主は答えられた。「あなたの言うとおりです。なお、あなたがたに
言っておきますが、今からのち、人の子が、力ある方の右の座に着き
、天の雲に乗って来るのを、あなたがたは見ることになります。」
すると大祭司は怒り狂い自分の着ていた衣を素手で引き裂いた。そし
て言った。「神への冒瀆だ。これでもまだ、証人が必要だろうか?
あなたがたは今、神をけがす言葉を聞いたのだ。どう思うか。」 その
場にいた人たちは「彼は死刑に当たる。」と言った。そして彼らは主
の顔に不潔にも唾をかけ、主の顔に拳で殴りつけ、それ以外の者たち
は、主を平手で打って言った。「当ててみろ。キリスト。お前を打っ
たのは誰か?」
 そのころリーダーは何処で何をしているのかヨハネは気になって、
その家から外に出ると、リーダーはたき火の場所に座ったままだった
。外は静かだった。リーダーのいる場所まで離れていたが、小さい声
でも聞こえた。その時、リーダーの傍まで一人の女中が近づき言った。
「あなたも、ガリラヤ人イエスと一緒に居ましたね。」すると彼は焦
ってその事を打ち消し「何を言っているのか、私にはわからない。」
と言い、このままここにいるのはまずいと思ったのか、その場を離れ
入口まで出て行くと、別の女中が彼を見て、そこにいる人々に「この
人はナザレ人イエスと一緒でした。」またも、それを打ち消し誓って
「そんな人は知らない。」と言った。それからしばらくすると、近く
に立っていた人々がリーダーに近寄って来て「確かに、あなたもあの
仲間だ。言葉の訛りではっきりわかる。」と言った。リーダーはパニ
ック状態の表情で「そんな人は知らない。」と言って、呪いをかけて
誓い始めた。すると、すぐ鶏が鳴いた。そして一瞬、リーダーはハッ
とした顔をした、多分さっきの夕食のときに、主がリーダーに言われ
た言葉を思い出したのだろう。そして彼は出て行って、激しく泣いた。