暖かく無関心なホットする人(P君) 5話  

 年は明けて新年になった。先週はホワイトクリスマスだった。東京砂漠という言葉が
あるが、あの教会は砂漠の中のオアシスだ。今、住んでいるアパートに引っ越して来たのは今から5年ぐらい前。会社に通勤する時に、あの教会を見つけた。数年前から気になっていたが、なかなか何かの理由が無いと行く事は難しかった。でも先週初めて、あの教会
に行く事が出来た。まさに近くて遠いとは、こう言う事だろう。砂漠の中にオアシスを
見つけたが、足が思うように動かなくて、なかなかオアシスまで、たどり着けなかった。
 でも先週のクリスマスに、ようやくたどり着いた。そこには今まで出会った事の無い
ような人達がいた。この東京砂漠の中に、「あんなオアシスがあるなんて。」とD君は
思っていた。二回目からは、気楽に教会に行けると思い、彼はホッとしていた。先週の
緊張感は無かった。ここから2kmぐらいしか離れていない。あの教会に自分の居場所が
出来た。今までは会社と、このアパートしか居場所は無かった。でも、これからは、あの教会自分の居場所に加えよう。と彼は思った。
 時刻は午前8時、そろそろ朝食を食べよう。あの教会の礼拝は10時30分からだ。朝食は
決まっている。パンとコーヒー(ブラック)と卵焼きとチーズとミカン。近くのスーパー
で会社帰りに買ってきた。パンにはバターとブルーベリーのジャムを塗った。コーヒーグアテマラの豆が好きなので、インスタントのネスカフェゴールドブレンドにしている。
ゴールドブレンドはコロンビアとグアテマラの豆を使っている。お気に入りのメニューが
できた。部屋はコーヒーの香りがする。TVを見ながら、コーヒーとパンなどを食べた。
今日の天気予報を見ると、一日中快晴だ。そうこうしていると、もうじき9時だ。今日、
教会に着ていく服選びだ。彼は、まるでデートにでも出かけるように、ウキウキしながら
服を選んだ。ダサい服だと、ちょっと嫌だな、と思った。実は先週、教会の受付に座って
いた一人の女性に少し、ひかれていた。そんな訳もあって教会に行くのが楽しみだった。


                             つづく