暖かく無関心なホッとする人(P君)2910話

 午後7時30分、リーナがシャワーを浴びに脱衣室に行くのを見届けてから、D君は
スマホを取り出し、リーダーから返事のメールを確認しようとした。(別にやましいことをしているわけじゃないけど、リーナに知られるとややこしいことになる。)


    D君へ
 メール読みました。以前僕は大学生の時、アメリカのシアトルにホームステイで留学
していたことは話したよね。そのときルームシェアしていた同じ大学に通う友人が
大事な事を教えてくれたんだ。それは個人情報の大切さだった。たとえば家と家との
境界線の事を考えるとわかりやすい。この場合、D君の家と剛君の家の境界線の事。
もしD君が剛君の家を訪問したいなら、まず剛君の家の玄関にあるインターホンを押
すよね。で、留守なら当然、返事はないよね。もしかしたら居留守を使って出ないかも
知れない。そんなときどうする?諦めて帰る人はジェントルマンだよね。そうじゃなくて
断りもなく勝手に玄関ドアを開けて、家の中に入る人はもう犯罪者だよね。これは
不法侵入罪。この場合「まいやん」は剛君の宝物なんだ。誰にもその在りかを教えないよ
ね。どこにあるかなんて剛君しか知らないよ。わざと隠してあるんだ。僕が思うに剛君
は誰にも「まいやん」を渡したくない。もし彼女が教会に来てキムタク(唐沢)のようなかっこいいイケメンが現れたら、彼に取られちゃうと思ってるんじゃないかと思うよ。
あの時もうキムタクはコウちゃんと付き合っていたからよかったけど。言っちゃ悪いけど剛君はキムタクのようなイケメンじゃないからね。剛君にしてみれば「まいやんみたいな
美人と付き合えることはこの先絶対ない。だから誰にも知られないよう付き合おう。」と
思ってるんじゃないかな。D君が気になるのはよくわかるけど、今は過渡期だと思うよ。
完全に彼氏彼女の関係になれば、手をつないでまた教会に来ると思う。今は遠くから
見守ろう。こんな時は「暖かく」剛君と「まいやん」が現れる前みたいに剛君とつきあい、一切「まいやん」のことに触れないで、これは「無関心」ということだ。じゃあまた


                                   桜井