暖かく無関心なホットする人(P君) 9話

 礼拝のメッセージは難しかった。それもそうだ、初めて聖書と言う本を読んでいるか
らだ。(正確には、先週も少し読んだ。)一度、最初から読んでみよう。しかし厚い本だ、と彼は思った。
 12時ちょうど頃、礼拝は終わった。せめて聖書のあらすじを知っていれば、と彼は思った。そこに受付の二人の女性が来た。D君はうれしくてたまらなかった。彼女達は
言った。「OOさん、どうぞこちらの部屋に来てください。」と隣の部屋に案内した。
 その部屋は20畳ぐらいある部屋だった。そのテーブルの上には綺麗な花が飾ってあり、おせち料理、みかん、焼いた鮭、すまし汁、お菓子などがあった。波瑠似の人が「OOさんはお餅を何枚食べます?」と聞いて来た。D君は「ありがとうございます。
二枚お願いします。」と言った。正月に、こんな御馳走を食べれるなんて何年ぶりだろう、と思った。今日は実家に帰った若者がいるせいか、先週いなかった若者の顔が、
その部屋にあった。10人ぐらいの若者がいた。自分が最年長だろう。35歳は青年じゃないけど、青年会に誘ってくれたのは嬉しかった。


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暖かく無関心なホットする人(P君) 8話

 D君は「今日は超ラッキーな日だ」と思った。昨年までは正月と言えば、TVを見たり
スノボーに友達と行ったりしたが、その親友も結婚してから家庭一番のマイホームパパ
になってしまった。30歳過ぎてスノボーに行っても若い頃と違ってあまり面白くない。
それで、ここ数年の正月はアパートに籠りっ放しだ、両親は「おせち料理」があるから
故郷の実家に来るように勧めるが、「おせち」につられて帰ったものなら、結婚結婚と
うるさく言われる。そのストレスを受けるぐらいなら貧しい食生活の方が、まだまし。と
彼は思い、ここ数年は故郷の実家に帰っていない。
 でも今年の正月は違う。ドミノ倒しのように先週のクリスマスから良い事が続く。
時間は10時15分。「そろそろ会堂に行きましょう。」とP君が言った。二人の女性は「
受付係なので、後から行きます。」と言った。
 10時30分になった。会堂は静まり返っていた。司会者が「それでは時間になりましたので、これより礼拝を行います。」と言って、「皆さん、ご起立してください。新聖歌
OO番。」と言いました。すると先週より多い60人ぐらいの人が居たと思う。先週は40人
ぐらいだった。多分、年末年始なので実家で正月を迎える、この教会のクリスチャンの子供達や、自宅は東京にあるが、仕事で正月ぐらいしか実家に帰れない、この教会の方々
だろう。
 P君は親切に今日も左隣の席に座って、新聖歌や聖書のページを開いて渡してくれた。


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暖かく無関心なホットする人(P君) 7話

 時間は9時40分になった。よし、いざ出陣とばかりに鏡をみて髪をチェックして出かけることにした。彼は落ち着かないせいか、さっきから何度も忘れ物がないかチェックした。「よし、準備OK」と言って、アパートを出てドアをロックし、階段を下りて走るようにインプレッサに乗り込みエンジンを掛けた。
 先週と違い、あっという間に教会に着いた。先週は近くて遠かった教会も、今日は近くて近い教会に変わった。教会に着いて駐車場を見ると、まだ早いせいか車は3台だった。教会の隣に牧師館があり、そこに一台の車があった。ということは、まだ3人しか来ていないと思う。D君は車から降り、教会の入口に向かった。
 教会に入りドアを開くと、そこにP君と先週受付で会った二人の女性が立っていた。
彼らは満面の笑みで「来て下さってありがとうございます。」と言い「もし、お時間が
ありましたら礼拝後に青年会がありますので、それにも御出席して下さい。昼食も用意してあります。」とガッキー似の女性が言った。今日は心に余裕があるので、彼女達の左手をチラッと見ると、薬指に指輪は無かった。D君は「ありがとうございます。お言葉に甘えていいですか?」と少し照れながら言った。三人は「御一緒できてうれしいです。」と
言った。D君は、こんなに嬉しいのは久しぶりだ、と思った。


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